初心者のための真空管雑学

主にアマチュア無線の観点から見た、1970年代初期の懐かしい真空管のお話です。

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このページのカウント数は です。(1997年1月1日以降)
最終更新日は、2003. 9. 17 です。


細かい動作原理や増幅率とかの理論的な話はおいておくとして、ここでは実際に真空管を使う上での話をしましょう。

原理

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カソード(K)から電子を飛ばして、プレート(P)でその電子を受けるのが基本です。普通その間にグリッド(G)が1つ以上入っていて、電子の流れを制御します。カソードの電圧を0とすると、プレートにはプラスの数百ボルト、グリッドにはマイナスの数ボルトを普通加えます。

ヒーターとフィラメント

普通の真空管は、カソードから電子を飛ばしてやるために熱を加えます(定電圧放電管を除く)。カソードとは別に暖めるものがある場合それをヒーター(H)といいます。また、電子を飛ばすものと暖めるものが同一の場合それをフィラメント(F)といいます。(その場合はカソードはありません。大昔の形式です。)昔の真空管ラジオやブラウン管式テレビ(ワイドテレビやハイビジョンテレビなどもそうです)が、電源を入れてもすぐには動作しないのは、ヒーターが暖まるまで時間がかかるからです。ところで、真空管のことをアメリカでは "Tube" と言いますが、イギリス英語では "Valve" と言うそうです。これは電流を制御するバルブというところから来ているようです。

真空管の種類

大きく分けて、ST管・GT管・MT管があります。(STは Shouldered Tube 、GTは Glass Tube 、MTは Miniature Tube の略です。)

1970年頃その辺のゴミ捨て場に落ちていた5球スーパーラジオ(アメリカでは、「オール・アメリカン・ファイブ」と呼ばれていたそうです。)や白黒テレビはほとんどMT管でした。左の絵のようなイメージです。

ヒーター電圧の話

6BM8とか12BY7Aとかいう名前のうち、最初の数字はヒーターにかける電圧を示しています。12BY7Aは12Vではなくて12.6V、6BM8は6Vではなくて6.3Vかけます。この電圧は、昔電源に用いられていた鉛畜電池の電圧に由来します。昔はそれ以外の電源は手に入りにくいものでした。6.3Vは、6V用鉛畜電池の満充電時の電圧です。(1個のセルあたり2.1ボルトです。)12.6Vは、6セルのバッテリーということになり、これは現在でも乗用車のほぼ全てに使われています。(3セルのバッテリーはアメリカでは1950年代の後半までは使われていたようです。)だから昔の電源トランスには6.3Vの2次巻線を良く見かけるわけです。また、昔からトランスは重くて高いのでなるべく使わないように設計がなされました。1970年頃その辺のゴミ捨て場に落ちていた5球スーパーや白黒テレビではほとんどがトランスレス設計となっていました。これは、複数の真空管のヒーターを直列に繋いで、強引に電源電圧の100Vにしてしまうというもので、例えば50Vのヒーターの真空管を2本つなげれば100Vになるわけです。ただこれは、一次側と2次側の絶縁がとれないという恐怖の設計のため、シャーシにさわると、50%の確率でAC100Vに感電するという恐ろしい物でした。(日本では、AC100Vの片方はアースに落ちているためです。アメリカではアース付きの3線式なので安全です。但しアメリカでも古い2線式のところもまだ残っていますが、極性付きプラグなので現在では安全が確保されています。)(但しアメリカでも昔は日本と同じでした。シャーシに触って感電するときの感覚から「ホット」シャーシという言葉が生まれたようです。ちなみに、イギリスでは「ライブ」接続と言われていたそうです。「生き物」に噛みつかれるというイメージのようです。)
なお、トランスレスの球はヒーター電圧の計算だけでなくヒーター電流を揃える必要があったとの情報を頂きました。混ぜて使ったら大変です。150 mAシリーズ(例、12BA6、35W4、50C5)・300 mAシリーズ・450 mAシリーズ(例、31JS6、40KD6)・600 mAシリーズ(例、30KD6)があり、例えば 150 mAの球をパラにつなげば 300 mAの球と混在できます。但し実際の設計は簡単なものではなく、ヒーターが冷えている状態から温まっている状態への過渡状態の抵抗値がそろって変化しないといけないので大変なようです。(冷えているときは温まっているときよりも抵抗値が低いので、電源オン時のラッシュ電流に注意しないといけません。)

5球スーパーに使われていた真空管

アメリカでは、12BE6, 12BA6, 12AV6, 50C, 35W4 の5つの真空管が使われていてヒーター電圧はトータル121Vにされてトランスレス配線されていました。日本では、12BE6, 12BA6, 12AV6, 35W4 (35W4は整流管)まではアメリカと同じでしたが、AF段の最後は 35C5 か 30A5 だったようです。30A5を使うと、トータルで101Vになり、ほとんどぴったりです。また、もっと昔の1955年位の5球スーパーは全てST管で、6WC5, 6D6, 6C6(または6ZDH3A?), 6ZP1, 12F の構成で出力約1Wを、6WC5, 6D6, 6C6, 42, 80 の構成で出力約3Wを得ていたとの情報を頂きました。

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代表的真空管の数々

0A2 これは、定電圧放電管です。要するにツェナーダイオードと同じ働きをするもので、放電現象によって両端の電圧を一定に保つものです。5球スーパー程度の物にはほとんど使われていませんでした。このようなガス放電管はグロー放電を利用しており、暗い部屋ではきれいな青い光が見られたそうです。
12BH7A これは、ゴミ捨て場に落ちていた白黒テレビで良く見かけました。ただ、たくさん拾ってはみたもののあまり使い道がなかった気がします。発振・電圧増幅用で、小信号特性よりも出力優先の設計となっており、あの有名なアンプのマッキントッシュ275ではKT88のドライブ段に使われていたそうです。さらにこの球は、1955年から1975年までの大部分のハモンドオルガンに使用されていました。μが低いこの球は、2つの3極管部分を並列接続して約3WのA級パワーアンプとされ、スプリングを使用したリバーブ(モデル L-100)や 600Ωラインドライバ(モデル B-3,C-3,RT-3等)、ビブラート・ディレイライン・ドライバ(モデル B-3,RT-3等)に用いられました。この球はもともとテレビ用の発振器のために設計されましたが、このようにオーディオ回路で広く用いられていたようです。
12BY7A これはよく無線関係の雑誌の製作記事に出てきた球で、HFのTXのファイナルの直前のドライバ段によく使われていました。ただこれは、前記の12BH7Aのようにはよく落ちていなかったので、ちゃんと買う必要がありました。もともとTVの映像出力用です。トリオ(アメリカでは昔からケンウッド)のアメリカ・バージョンのTS-530Sでは、6146B2本のファイナルをドライブするために12BY7Aが一本使われていたようです。トリオは昔は春日電機という社名だったそうです。
2A3 これはオーディオマニアの人には超有名な球なので説明の必要はないでしょう。(あまりにメジャーで高価なので今も昔も私は持っていません。)ヒーターではなくてフィラメントを使っている三極管です。確かマニアの世界ではヒーター付きの五極管を使うのは邪道で、フィラメントの三極管を使うのが通なのでしたっけ?私はあまり詳しくはありませんが・・・
2E26 アマチュア無線のHF帯の送信機の出力段の球として有名です。これでHF全バンドと更に6mで10Wの出力が得られました。1970年代前半のリグでは、送信のファイナル(またはファイナルとドライブの両方)だけ球で、あとは石という設計が主流でした。今では考えられないことです。実際に使われていたリグとしてはトリオのTX88A(但し一部ロットは807使用)、TX26、TX388、そして6mAM機として名高い日新電気(日新電子だったかも)のパナ6・スカ6等があります。


4CX250B もう4CXといえば、みんなのあこがれのリニアアンプしかありません。HFの10W機のあとに付けるリニアアンプはこれが入っているのが多かったと思います。これでHFで100W以上出せます。しかし実際持っている人は聞いたことがありませんでした。よほど裕福なOMさんか、アンカバ(UC)(なんと懐かしい言葉!)の人しか縁がない球でした。そうそう、「4CX」の意味はご存じですか?4は四極管の4。Cは絶縁体がセラミックという意味。Xは強制空冷(さらに、Wは水冷、Vは蒸発空冷)の意味だそうです。その後の数字はプレート損失を表しているのですが、・・例外もあるそうです。この球はアマチュア用だけでなく、放送局用のドライバに良く使われるそうです。また、4CXシリーズにはより大きい4CX5000A, 4CX15000Aなどがあり、放送局のファイナル管に使われるようです。
5MK9 なんと二極管です!そうそうこれは、要するに整流用ダイオード一本と同じ働きしかしないのです。1970年頃その辺のゴミ捨て場に落ちていた5球スーパーには使っている物もありましたが、雑誌の製作記事ではもうダイオードを使う方が主流でした。しかしいまだにオーディオマニアの間では三極管がもてはやされるというのに、二極管は全く見向きもされないのでちょっと可哀想な気もします。
6146/6146B これらは有名な送信管で、6146BはS2001(「えすにいまるまるいち」と読む)と言う名前の方が有名かもしれません。特にS2001はよく使われていました。(S2001は、松下が6146Bをベースに民生用にコストダウンした球だそうです。)(そのためベース部分がベークでできており、「ハカマ」と呼ばれるシールドが必要なうえ、プレートの色(材質)が明らかに異なっており本当に 6146B と同じ損失を持っているのか、多くの人が疑っていたとの情報を頂きました。)これらは、HFで10W出るだけでなく、6mでも10W出せたのです。HFではトリオのTS311(TX310)、510がこれを使っていました。また、1970年代前半にはなんと6m SSBのトランシーバーのキットがトリオから出ていて、これにもS2001が使われていました。そうそうリグの名前はQS500です。(ちなみに、TS310/QS500共、ドライバ段には12BY7Aが使われていました。)
6AQ5 これはGT管の6V6のMT管版で、低周波増幅管です。ただ、高周波特性が良く、ドライバや小電力の送信機には使われたようです。ところで、FT401Sのファイナルは何でしたっけ?テレビの水平出力と同じ球で、(ケデロク)6KD6 ?でしたか?ちょっと規格と接続図はないんですが・・・。FT401Sは6JS6A (またはC)、FTDX401が6KD6が2本、FL2500が6KD6が5本、FL2100が572Bが2本との情報を頂いています。 八重洲のリニアアンプ(FLDX2000?)は元々は6KD6が4本でしたが、6KD6が入手困難になってからユーザーが30KD6を流用してヒーターを4本直列にして120Vとして電源トランスの1次側の120Vのタップに繋いでいたとの情報も頂いていますが未確認です。アメリカ仕様だとそのままトランスレス接続できるということでしょうか。
6AR5 これは落ちている5球スーパーの仲間の球だったかと思います。あまり高級ではないラジオの低周波電力増幅段だったと思います。
6AU6 5球スーパーもそうですが、受信機の製作記事にかなり登場した球です。RF/IF段の増幅用で、確かIFが多かったと思います。6AU6のグリッドは、球の中央部と周辺部とで空隙の幅が一定となるように巻かれていて、これによってシャープ・カットオフ特性を得ています。これに対し、6BA6のグリッドは、球の中心部では密に周辺部では疎になっており、これによってリモート・カットオフ特性を得ています。
6BA6 これこそ真打ち登場といった球です。5球スーパー・受信機の製作記事・AM帯のワイアレスマイク等どこにでも登場しました。高周波増幅用の球です。リモートカットオフは何に使うんでしたっけ?確かRF-AGCとかをかけるときに使うんだったか・・・そうそうそれで6BA6がRF用で、6AU6がIF用だったような気もしてきました。(5球スーパーでは6BA6(正確には12BA6)がIFアンプに使われていました。) 6AU6のグリッドは、球の中央部と周辺部とで空隙の幅が一定となるように巻かれていてシャープ・カットオフ特性を得ているのに対し、6BA6のグリッドは、球の中心部では密に周辺部では疎になっており、これによってリモート・カットオフ特性を得ています。なお、6BA6は上記のようにあまり性能を追求しないラジオなどの場合には高周波増幅にも使いますが、通信機用途の場合は高周波増幅には主に 6BZ6が使用されたそうです。(さらに高級なものは、舶来品と思われる 6DC6を使用していたようです。) また、当時日本ではFM放送はまだ一般的ではありませんでしたが、さすがにアメリカではすでに普及していたようで、6AL5のFM検波器の前に 6BA6がリミッターとして用いられていたとの情報を頂きました。


6BE6 七極管といえば、周波数変換。それのみです。6BA6の次の段には必ず6BE6があって、ミキサーになってるのです。(ただし、5球スーパーでは12BE6が初段で12BA6がIFでした。) 確か七極管だと一本で局発と混合ができたと思います。第1グリッドは三極管のグリッドの役目を果たし、第2グリッドは三極管のプレートになっていて、この三極管部で発振動作を行います。第3グリッドがミキサー部の入力グリッドになっていて、第4・第5グリッドが五極管の第2・第3グリッドに相当します。この五極管部で混合動作を行います。
6BM8 これも大変懐かしい球です。三極・五極管とは、要するに一つの球に二つの中身が入っている物で、6BM8の場合は、三極部はオーディオのプリアンプになっていて、五極部がメインアンプに相当します。ただこの球はHiFi(死語!)用ではないので、(一部HiFi用もあったみたいですが・・)やはり5球スーパーの低周波アンプ用といったところです。最近はスベトラーナ社?(Svetlana)が新版を製造し、好評を博しているとの情報を頂いています。

近頃は超三結アンプに使われて盛り上がっているんですね。知りませんでした。いろいろなサイトを読んで、ついに 6BM8 を使ったアンプを作りました。こちらからどうぞ

6GB6 珍しくGT管ですが、何用だったかちょっとはっきり覚えてません。確か、テレビを拾うとたまにGT管が入っているのがあって、それがこの球だったような気がします。どうやら、白黒テレビの水平出力管としてよく使われたようです。これは国産規格品のようです。 皆様から頂いた情報によると、これはヨーロッパで使用されていたEL36の同等品のようです。EL36と似た球にはE130Lがありますが、それはとても高価でそのかわりに用いられていたようです。
6U8 これは5球スーパーより高級な通信機用の球です。三極・五極管でも、これは高周波増幅用の球で、確か高周波でローノイズというのが特徴だったと思います。前記のように、5球スーパーでは高周波増幅を6BA6でやってそのあと6BE6で周波数変換というのが常道でしたが、通信用受信機では一本目の6U8の三極部がRF初段になり五極部でその次の増幅を行い、二本目の6U8の三極部が局発で、五極部がミキサーだったと思います。太くて背が小さいかわいい球です。ヨーロッパではECF82と呼ばれていたようです。
807 超有名な送信管です。これは、メーカー製リグではトリオのTX88Aの一部で使われましたが、主に自作する人がたまに使う球でした。70年代以前には送信管としてもっとも普及していました。HF用で、20W〜50W位出たかと思います。ところで、送信管はみんなそうですが、接続図を見れば分かるとおりプレートは球の上にある端子から接続していました。大電力を扱うので当然といえば当然ですが、このデザインがますます趣を増していることは否定できません。ところで、807 についての話題です。当時のアメリカのハムは、"cold 807" を楽しんでいました。これは807と同じ格好をした瓶に入っているビールです。QSTには"88"というビールも載っていました(これは明らかにアルコール分 8.8% ということです。)。「この cold 807 とかを一杯やると、73 になるよ。」と説明文が載ってたそうです。
マジックアイ (6MDE1) 同調指示管と言います。これはまた特殊な球で、光りかたによって同調したかずれているかを示す物です。光の帯が扇形を形成しており、非同調時は帯が広がっており、同調時はそれが狭くなります。信号強度が強いほど狭くなる度合いは強くなります。ここに示した規格はMT管のものですが、昔拾った5球スーパーにはGT管のマジックアイが付いていて、球の頭のところが光る趣深いものでした。これは多分6E5(または6G5)で、GT管のように見えますがST管だったようです。むかしは、当然PLLシンセサイザのICなんかなく、同調はバリコンを回して行うものでしたし、発光ダイオードで光らせることもできませんでしたし、更に、Sメーターは結構高くて普通のラジオに付けるような物ではありませんでした。緑色の光の帯の様子を下の図に示します。(なお、ケースに取り付けるときは光らない部分を下にして取り付けたそうです。私はケースの無いのをゴミ捨て場から拾っただけなので知りませんでした。)
ニキシー管 ちょっと番外編ですが、ニキシー管です。これは背の低い真空管と同様なガラスのきょう体の中に、0123456789の10種類の数字に対応した電極が入っており、例えば0の端子に電圧をかけると0の数字がネオン管の放電の原理で光って見えるというものです。ごく後期のニキシー管は、日の字型の7セグメント表示のものもありましたがほとんど全てのニキシー管は7セグメントではなく、単に0の端子に電圧をかけると0の数字というふうに一対一対応でした。この一対一対応こそがニキシー管を独特の雰囲気にさせていて、構造上10種類の数字の電極を全部収納するためには、どれかを前にしてどれかを後にしなければならないわけですが、そうすると、例えば9、8、7、とカウントダウンした場合に、数字がだんだん奥から手前に近づいてきたりとか、ランダムに数字を表示した場合にはランダムに数字が近づいたり遠ざかったりするという、何とも趣深い動きをするわけです。しかもネオン放電なので色は真空管のヒーターに近い、オレンジっぽいゴールドで、これも独特の雰囲気です。書体の方も、なんというかこれまた独特の趣があったものでした。昔は結構身近なもので、国鉄・私鉄・地下鉄の切符の販売機にも使われていてお金を入れると金額を表示したものです。ただ、奥の方の数字は構造上見にくくなってしまいます。このページのアクセスカウンターに、ニキシー管の画像を使用しています。このすばらしい画像はこちらのサイトのオーナーの方に頂いたものです。貴重な画像どうもありがとうございます。
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